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基調講演で「銀行体験最適化」提言、nCino Summit Japan 2021開催

nCinoは2019年末の日本市場進出以来、日本の金融機関のお客様にもビジネス価値を提供できるよう準備を進め、その体制が整ったことを機に2021年2月4日にオンラインカンファレンス「nCino Summit Japan 2021」を実施しました。この記事では基調講演「銀行体験最適化への旅路~顧客中心の銀行体験へ~」の模様を紹介します。

■nCinoが日本の金融機関のDXに貢献できる理由

世界的なパンデミックは、個人の日常生活だけでなく、企業のビジネス活動にも大きな影響を及ぼしています。一部の先進企業が進めてきたデジタルトランスフォーメーション(DX)は、今ではあらゆる業種業態の組織にとって喫緊の課題であり、これまで以上のスピードで変革に取り組むことが求められています。日本の金融機関もその例外ではありません。ニューノーマルへの対応に加え、「少子高齢化」「労働人口減少」「競争環境の激化」のような社会課題を解決し、持続可能な経営基盤確立に向けた変革を迫られています。最初に登壇した日本法人代表の野村逸紀は、参加者の皆様に向け「nCinoという武器が存在することを持ち帰りいただきたい」と語りかけました。

基調講演のテーマに据えた「銀行体験の最適化」という言葉には、「日本の金融機関には、お客様と行員の両方から選ばれる存在になるべき」というnCinoの信念が込められています。nCinoは製品の提供を通じてその実現に貢献できると考えていますが、これを短期間で達成するのは難しい。長期間にわたる日本の金融機関との伴走が可能な体制を整備するべく、製品のローカライズや販売体制の強化を進めてきました。nCino CEOのPierre Naudéは、「今後も国際展開戦略の一環として日本での成長に向けて投資を続けていく」と日本市場への長期コミットを明言しています。

野村はnCinoのユニークな特徴として以下の4点を指摘します。まず、nCinoが銀行にルーツを持つ会社だということです。元々、法人融資のための社内システムを提供していたことを背景に、多くの製品機能を追加してきました。2つ目の特徴は、Salesforce Force.com上で構築されたSaaSであることです。業務に必要なシステムが乱立していると、融資担当者は不便を強いられます。nCinoの場合、単一のプラットフォーム上に業務プロセスが統合されているため、そのストレスがありません。また、SalesforceのCRM製品と連携させて使うことで、Salesforceが提唱する顧客中心の業務遂行が可能となります。3つ目の特徴は、完全なクラウドモデルで製品を提供していることです。投資リスクを最小化し、迅速に使い始めることができます。また、時や場所、デバイスの種類を選ばずに必要なデータにアクセスすることも可能です。最後が網羅性の高い融資システムを提供していることです。nCinoのビジネスは法人融資の機能提供から始まりましたが、今では個人融資や住宅ローン、リースまで幅広い業務をカバーする機能を提供しています(図1)。

図1:nCinoの製品体系

このような特徴が多くの金融機関のお客様から評価され、2020年7月には米国NASDAQ市場に株式公開も果たしました。2021年2月現在の顧客数は約1,200(10カ国語圏で利用)。米Bank of America、英Barclaysのようなグローバル大手行を始め、世界中のあらゆる規模の金融機関がnCinoを利用して成果を出しています。日本でもDXに意欲的な金融機関のビジネスを支援していく計画です。

■DXにビジネス機会を見出した三井住友フィナンシャルグループ

日本の金融機関のDXへの取り組みは急ピッチで進んでいます。ゲストとして基調講演に登壇した株式会社三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO 谷崎勝教氏は、Pierre Naudéを相手に同グループの取り組みについて語り合いました。

コロナ禍で個人の取引はもとより法人のオンライン取引が増えた他、一般企業と同様に顧客との面談もオンライン中心に変わりました。「我々が想定していたよりも早いペースで、お客様のデジタライゼーションが進んでいる」と谷崎氏は話します。ここ数年、同グループでは金融サービス事業のDXだけでなく、パートナーと共同で進める金融周辺のデジタルサービスの提供に力を入れてきましたが、その加速が必要と谷崎氏は認識しています。金融庁の動向を見ても、金融機関のDXには追い風が吹いています。従来は厳格な業務範囲規制が課されていましたが、ポストコロナの日本経済の回復に向け、デジタル化や地方創生など、持続可能な社会構築に役立つ領域に関しては柔軟に適用される方向性が打ち出されているからです。

谷崎氏はグループのデジタル戦略の方向性として、「デジタル戦略におけるプレゼンスの拡大」「ビジネスモデルの高度化」「ターゲット領域の深化」「対象地域の拡大」の4つを紹介しました。特に3つ目の方向性に関連した「Embedded Finance」は興味深い取り組みです。これは同グループが提供する金融サービス機能をパートナー企業が運営するサービスフローに「埋め込んで」提供することで、間接的にパートナー企業が金融サービスを提供できるようにするものです。ユーザーにとっては快適にサービスを使うことができ、パートナー企業にとっても顧客への新しい価値の提供と収益源の多様化を進めることができるという双方にメリットがある仕組みです。この他にもデータを分析し、新しいファイナンススキームを開発する取り組みも進めています。

CEO Pierre Naudéと日本の銀行とDXについて対談する谷崎氏

さらに谷崎氏が強調したのが「カスタマーファーストの重要性」です。谷崎氏は豊富な業務知識と最新テクノロジーの実装経験を持つ人物ですが、「新しいテクノロジーを使って何かできないかと考えるのではなく、我々はあくまでもカスタマードリブンで進める」と、顧客中心の姿勢を強く打ち出しました。さらに谷崎氏は、日本の金融機関にとっての課題として、健全な危機感とスピード感の2つを挙げます。三井住友フィナンシャルグループが金融周辺サービスに力を入れている背景には、「金融とそれ以外のビジネスの収斂が進む時代が来る」という将来に対する危機感があります。自分たちだけで新しいビジネスをやろうとすると時間もかかれば、お金もかかる。成果を早く手にするため、これまで以上に多くのパートナーからの協力を得て、DXをさらに加速させていく展望を同グループは描いています。

■nCinoが提供できる価値

nCinoは単なる融資システムを提供しているわけではありません。nCinoが提供できる定量的な価値として「収益の向上」「業務効率の向上」「運営コストの削減」「事業リスクの低減」がありますが、特に自信を持って貢献できるのがトップラインの収益向上です。nCinoのお客様の中には、製品導入後に67%の融資残高増を達成した金融機関も存在します。融資の申込みから実行までのリードタイムを短縮できれば、行員の働き方が変わり、お客様との関係も強固なエンゲージメントに裏付けられたものに変わるでしょう。nCinoは「お客様と行員の両方から選ばれる金融機関」になるためのサポートを提供していきます。