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製品提供だけではないnCino、パートナーと共同で定着化まで強力支援

nCinoが2月4日にオンラインで実施した「nCino Summit Japan 2021」では、製品基調講演に続きnCinoから3人が登壇。米国における主な導入事例、導入から得られる成果を高めるための「チェンジマネジメント」の方法論、導入パートナーとnCinoが共同で提供するサポート内容について、それぞれが説明しました。

■多岐にわたる金融機関のサポート実績

最初に登壇したのはCorinne Naudé(nCino株式会社 日本地区担当 Vice President)です。nCinoは2011年の創業以来、順調に導入企業を増やし、今ではグローバル大手金融機関から地域密着型の金融機関、あるいはチャレンジャーバンクまで多岐にわたるお客様を抱えています(図1)。

図1:nCinoを導入している金融機関の例
出典:nCino

2021年2月時点での米国における法人融資ソリューションの導入数は284件。Naudéはその中でも代表的な3つの事例を紹介しました。

○Oxford Bank

イリノイ州に本拠地を置くOxford Bankは日本で言えば信用金庫に相当する金融機関です。同行はビジネス規模の拡大と収益の拡大を目的として、2015年にnCinoを導入しました。導入前の悩みは手作業や紙が中心の非効率的なプロセスにありました。nCinoを導入し、融資プロセスのデジタル化に取り組んだ結果、行員の業務効率は大きく向上。法人向け融資残高は1年間で11%以上増加しました。この収益効果は、顧客により良い体験を提供できたから得られたものとOxford Bankは考えています。

○United Community Bank

ジョージア州に本部を置くUnited Community Bank は、周辺州の拠点も含めてビジネスを展開している地方銀行です。2014年にnCinoを導入する以前、融資プロセスが複雑で時間がかかることが大きな課題でした。システム単位で分断していた融資プロセスをnCinoに統合した結果、融資残高は8%、預金は7%増加する成果を得ました。業務効率も従来比で57.5%改善したと言います。さらに同行は融資案件のトラッキングを行い、nCinoをリスク低減にも役立てています。

○Navy Federal Credit Union

Navy Federal Credit Unionの本部は米ヴァージニア州にあります。ただし、全世界で働く組合員に金融サービスを提供していることから、その事業規模は米トップクラスの地方銀行に匹敵するほどです。同組合が2017年にnCinoを導入した目的は、新規顧客の申請手続きを合理化し、融資を増やすことにありました。複数の融資関連システムをnCinoに統一したことで、手作業に依存していたプロセスの自動化に成功した他、電子署名などの新しい機能を迅速に提供できるようにもなりました。その結果、nCino導入から5カ月で新規の融資顧客を1万人獲得し、2000件以上の法人融資契約を新規で獲得することに成功しました。

■プロジェクトROIの最大化に欠かせないチェンジマネジメント

続いて登壇した松本敏充(nCino株式会社 シニアプロジェクトマネージャー)は、チェンジマネジメントの定義と必要性について紹介しました。チェンジマネジメントとは、企業変革を成功に導くためのマネジメント手法であり、組織と人に焦点を当てていることが特徴です。経営層からの強いサポートを得たり、現状からの変化を嫌う保守派や抵抗者の心理面のケアを含めた変革の推進に加え、組織において継続的な変革に取り組むケイパビリティの確立にも役立ちます。

松本はコンサルティングファームの調査結果から以下の2つの数字を紹介し、プロジェクトにチェンジマネジメントの方法論を取り入れることでより大きな成果が得られると指摘しました。

○143%

組織的なチェンジマネジメントを実践したプロジェクトでは、平均143%のROIを達成するのに対して、そうではないプロジェクトのROIは35%に留まる。

○6倍

優れたチェンジマネジメントを実践したプロジェクトでは、そうではないプロジェクトと比べてその目標達成率が6倍になる。

DXのようなプロジェクトは成功すれば高いROIを得られる反面、実施にあたってはある種の「痛み」を伴うことも少なくありません。変化に伴う組織の痛み、つまり悪影響を最小限に抑えるために役立つのがチェンジマネジメントです。「この悪影響はプロジェクト後、つまり新しい仕組みの導入後に抑え込もうとしても難しく、プロジェクト実行中、つまり導入フェーズで正しい準備をすることが不可欠」と松本は強調します。

また、nCinoでは製品を導入する金融機関が確実に成果を得られるよう、体系的なチェンジマネジメントプログラムを提供しています。具体的には図2に示す8つのフォーカスエリアを定義し、それぞれの検討を通して、組織の中に「変革のDNA」を確立することを目指しているのです。

図2:nCinoが提供するチェンジマネジメントのサポートフレームワーク
出典:nCino

また、nCinoはプロジェクトを通じて、「メソッド」「トレーニング」「エキスパート」の3点で金融機関の変革を支援します。「メソッド」とは、多数のプロジェクトを通じて蓄積してきたフレームワークや診断ツール等、ベストプラクティスの集合です。また、「トレーニング」ではチェンジマネジメントの実践に向け、ブートキャンプカリキュラムの提供に加え、プロジェクトの実態に即したプレイブック作成も支援します。さらに多様な経歴を持つnCinoの「エキスパート」の経験を結集し、戦略策定から実行フェーズにおいて、変革プロジェクトの推進をお手伝いします。

nCinoは製品の提供と、チェンジマネジメントを始めとするプロジェクト推進や技術的支援等を行うプロフェッショナルサービスの両輪によって、金融機関の皆様による変革の実現に貢献したいと考えています。

■パートナーと共同で日本の金融機関を強力サポート

3つの特別セッションの最後に登壇したのがパートナー担当の中尾貴之(nCino株式会社 ストラテジックパートナーシップアンドアライアンス ディレクター)です。グローバルでは多くの導入実績を持つnCinoですが、日本のお客様が導入は始まったばかりです。中尾は日本の金融機関のお客様がこれから戦略的にDXを進めていくにあたって、nCinoとして日本のコンサルティングファームやIT企業とどのように協働するかを説明しました。

中尾によれば、プロジェクトを成功に導くために重要な要素として「深い業務知識及び業界知識」「確固たる実績」「メソドロジー(導入方法論)」「トップタレント」があります。投資対効果を最大化するには、nCinoだけでなく導入パートナーにも深い専門知識が求められます。これまでの難易度の高いプロジェクトを共に進めてきた経験を活かし、日本でも同様にする計画です。加えてnCinoは成功事例を共有する「アクセラレータープログラム」や知識レベルが揃ったコンサルタントたちを集めてプロジェクトチームを作るための「パートナー認定制度」も用意しています。

パートナーとの大まかな役割分担は図3のようになります。赤枠の中の「要件定義」「インプリ面テーション」「インテグレーション」及び運用定着化のための「チェンジマネジメント」や「マネージドサービス」をnCinoが担当し、青枠の「ビジネスケース作成」「プロセス再設計」「ベンダー選定」「データサービス」「コアアップグレード」をパートナーが担当します。とは言え、ビジネスケースの作成やユーザートレーニングを共同で行う場合もありますし、お客様と相談の上、実際の役割分担を決めるようにしています。

図3:パートナーと協業する場合の役割分担例
出典:nCino

お客様の定着化を支援するには、トレーニングプログラムと認定制度も重要です。役割や習熟度別に多くのトレーニングコンテンツを用意していますし、必要に応じてnCino社員がトレーニング講師を務めることも可能です。

また、テクノロジーパートナーとの連携も進めています。nCinoはAPIで外部のサービスとのデータ連携を実現するオープンプラットフォーム戦略を掲げており、日本特有の業務要件に合わせた拡張が可能です。帝国データバンクの信用情報の参照、Mambuによるコア業務との連携、電子サインではSMBCクラウドサイン、eKYCではPolarifyとの連携を実現しています。今後も日本の金融機関をより強力にサポートするため、テクノロジーパートナーとのアライアンスも強化していく計画です。