11月13日にnCinoが東京ステーションホテルで開催した「nCino Summit 2024」。本セッションは、nCinoを採用して業務改革に取り組む野村信託銀行株式会社 審査部 課長代理 濱野真之氏、株式会社西京銀行 ビジネスコンサルティング部 DX推進室長 秋吉郁弥氏、株式会社徳島大正銀行 企画部部長代理 兼 企画部デジタル戦略室 部長代理 松田大輔氏をパネリストに迎え、nCino導入決定から現在、そして今後の計画を会場参加者と共有した。モデレーターはnCinoの川浪史織(シニア・カスタマーサクセスマネージャー)が務めた。
■システムの使いづらさに悩む融資の現場
川浪:nCinoを導入した時期、スコープはそれぞれに違います。野村信託銀行様では本番稼働から1年半以上経過していますが、西京銀行様はまもなく本番稼働を迎えるところ、徳島大正銀行様は2024年10月に導入を発表したばかりです。まず、濱野さんに聞きたいのが、導入前に認識していた課題とnCinoの導入後にそれを解決できたかです。
濱野:これまでの融資案件の決裁判断は、良くも悪くも属人化していたと思います。ベテランの経験に依存していたのが、今はナレッジベースでの判断に変わりました。nCinoを導入して最も良かったことと考えています。
川浪:西京銀行様は住宅ローンからnCinoの導入を始めました。これはなぜですか。
秋吉:導入前の課題は大きく2つありました。1つは業務フローが対面を前提としていたこと、もう1つが事務負担の増加です。2023年4月から住宅ローンのWeb受付を始めたのですが、本申込みと契約で、最低2回の来店を必要とするものでした。完全な非対面化を実現し、お客様の利便性を向上させたいと考えたのがnCino導入理由の1つになりました。また、Web受付を始めたとき、付随事務を本部に集中化したのですが、途中のプロセスを支えるシステムが複数あり、かえって手作業によるシステム間連携の負担が増えてしまいました。一気通貫で業務を効率化したい。それがもう1つの導入理由になりました。
川浪:導入を決めたばかりの松田さんのところはいかがですか。
松田:3年前の支店勤務時代、各業務でそれぞれ使用するシステムは、導入した時期も違えば、入力方式も異なるものばかりでした。システム間の連携も十分ではなく、各システムの間を行ったり来たりしながら仕事をするのが大変でした。そのためお客様のための時間を確保するのに苦労していました。そうした自分自身の経験もありnCinoを導入し、ワンプラットフォームの上で全ての業務をやろう。業務をnCinoに合わせて変革しよう。新システムを武器にお客様のところに行こう。そう考えました。
■「Fit to Standard」に挑戦した銀行、これから挑戦する銀行
川浪:稼働後は全行に影響が及びます。導入決定に至るには、多くの人たちから合意を得なければなりません。そのポイントはどこにありましたか。
松田:2つあると思います。1つはボトムアップとトップダウンの両方でやること。デジタル部門の中だけに閉じるのでなく、他の部門とも対話する。さらには経営と話し、結果を経営戦略に織り込んでおくことです。当行では「対面の手続きや事務処理の時間を減らし、お客様との対話の時間を創出する」、これを経営と合意しました。もう1つは是々非々で関係者と話をすることです。事務システム部門とは、システム連携やクラウドのセキュリティについて、かなり対話を重ねましたし、融資部門とも同じようにしました。丁寧に対話を重ねたことで、全行一致で導入を進められそうです。顧客管理から、行動管理、融資は全てnCinoに移行し、2年後の稼働開始を目指します。2025年4月にプロジェクトが立ち上がる予定です。
川浪:秋吉さんのところは本番稼働間近ですが、ここまでを約半年で進めてきました。金融機関のプロジェクトでは異例の速さです。短期間での稼働開始のポイントはどこにあったと思いますか。
秋吉:今日のキーワードで何度か出てきた「Fit to Standard」です。nCinoのシステムは世界中の金融機関に採用されていて、定期アップデートで最適化されている。そのシステムに私たちの業務を合わせるには、できる限りカスタマイズしないことが大事です。プロジェクトチーム内で協議を重ねながら、この方針を徹底したことが短期間での稼働を可能にしたと思います。
川浪:「Fit to Standard」を徹底できたのは素晴らしいですね。松田さんのところの導入はこれからです。どんな効果が得られると期待していますか。
積:(参加者席から)その点についてはぜひ私から説明させてください。私たちの試算では、月に1万5,000時間の業務量削減を見込んでいます。この時間をお客様のために、あるいは部下への指導に使う時間に充ててもらいたい。営業の質と量を高め、トップライン向上に繋げてもらいたい。それから、徳島大正銀行の行員として、プライドを持って仕事に臨んでほしいとも思っています。nCinoを導入した2年後には、グローバルでも先端を行く地銀になる。行員が誇れる銀行にしようと考えています。
■稼働開始後の運用の内製化も視野
川浪:これからが楽しみですね。濱野さんに聞きたいのは今後の展開です。
濱野:今は、一部の部署を中心に先行的に導入したシステムが稼働している状況です。実際に効果を得て、やって良かったというマインドの醸成に成功すれば、全行への利用拡大が可能になる。そう考えて、このアプローチを選択しました。だからこそ、今後はもっと適用範囲を拡げたいと考えています。
川浪:濱野さんはnCinoだけでなく、Salesforceにも精通していますよね。
濱野:導入当初は必ずシステムエラーが出ます。一部のシステムを残しているため、あるシステムから別のシステムへのデータエクスポートでエラーが出ました。不具合に直面する都度、nCinoに相談して解決を繰り返す過程で、自分たちで対応できる部分が見えてきました。また、nCinoはSalesforceのプラットフォーム上で動いているため、情報源が充実しています。学びを通して知識を蓄える中、結果的にできるようになったように思います。他のシステムへの影響度など、IT部門に確認するべきことはありますが、今後はできることは可能な限り自分たちでやるようにしたいと考えています。
川浪:秋吉さんたちも内製化を目指しているとのことでした。今後の展開をどのように考えていますか。
秋吉:住宅ローンシステムの本番稼働を控えているので、無事にリリースの日を迎えることを第一に考えていますが、リリース後の保守は自分たちでと考えています。また、できるだけ早く、リテールローンなど他の領域へのnCino導入を実現し、効果を高めたいですね。このリテールローンの画面構築については全て内製化でと考えています。2024年5月には、自営型の勘定系システムをリリースしました。できるだけ内製化するカルチャーが根付いているのかもしれません。
■これからも続く3行それぞれの業務改革
川浪:本番稼働後もnCinoからのサポートは続きます。最後に全員に聞きたいのが、nCinoへの今後の期待です。
濱野:稼働開始から約1年半が経過しました。現在は未使用の機能も今後活用していき、最終的には融資の入口から出口までをnCinoに集約させたいですね。
秋吉:nCinoのコンセプトに共感できる金融機関の担当者は他にも多いと思います。これからnCinoを採用する金融機関が増えていくことを期待したいですし、その過程でお互いの活用事例を共有する場ができればもっとうれしいです。
松田:自分たちの業務を変える時、最後まで付き合ってもらえるパートナーか否かはとても重要です。採用を決めるまでの1年間、nCinoだけでなくアクセンチュアとも対話を繰り返しました。実は、アメリカの会社なので対応はドライだろうと想像していたのですが、全くそんなことはありませんでした。業務変革を一緒にやるパートナーとしてnCinoと契約したつもりです。一個人としてもnCinoに期待しています。
川浪:ありがとうございました。私たちも皆様と共に改革を進める仲間をもっと増やしたいと思います。